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平成19年4月1日

<マッチバイザーの任務>平成19年度版

(財)日本ハンドボール協会競技運営部

 マッチバイザーの任務について、平成17年8月1日に競技規則改正が行われ、一部改正した。IHF(国際ハンドボール連盟)では、記録席に着席して各試合を管理する役員をテクニカル・デレゲート(TD)と呼んでいる。マッチバイザーは日本独自の用語である。IHFでは各試合、2名のTDを配置し、残りの4名は1名の医事委員(ドーピングコントロール役員)、3名の記録席員で構成している。1997年の熊本世界選手権では6名体制で実施されたが、2名のIHFのTDに加え、1名のマッチスーパーバイザーを配置した。マッチスーパーバイザーは日本では常務理事に相当する各委員会の委員長であった。日本国内も可能な限りIHFにあわせた競技運営をすることが必要であると考えられるが、現行のマッチバイザー制度はTDの職務もこなし、当面は現状のまま進める。
 マッチバイザーは競技委員長のもと、競技役員として各試合に立ち会い、試合を円滑に運営するために、審判員、タイムキーパー、スコアラー、その他の競技役員、補助員と協力して試合を管理する責任者である。

マッチバイザーの果たす役割
 (1)審判員、他の競技役員、補助員と協力し、円滑なゲーム管理を行う。
 (2)判定上の問題が生じたとき、適切な助言を行う。
 (3)タイムキーパーの時計の管理、交代地域規定の管理をする。
 (4)公式記録用紙の照合を行う。
 (5) 試合中止の判断は審判員にあるが、続行のために適切な助言を行う。

 マッチバイザーに任命された委員は最新の競技規則書、競技規則書必携、大会開催マニュアル、笛、及びストップウォッチを持って試合に臨まなければならない。ほとんどの事項は競技規則書、競技規則必携、大会開催マニュアルに記されている。
 以下に一般的なマッチバイザーの任務の流れを記した。原則としてすべての事項を把握しておく、あるいは行動するべきであるが、審判員、記録席員、その他の競技役員が対応することもできる事項がある。マッチバイザーに代わってできる事項は記録席員、あるいは、競技役員に対応させてもよい。これらの判断はマッチバイザーがする。 
 用語の使い方として、マッチバイザーが直接行動しなくても良い事項を「管理」すると表現した。ただし、それらの事項の最終責任はマッチバイザーにある。
 なお、本協会主催、共催の大会にマッチバイザーとして任務に就く者は、本協会に協会役員登録、または審判員登録していなければならない。マッチバイザーの任務に就くときは、協会役員登録証、または審判員登録証を携帯していなければならない。


1「審判会議」
1−1 その大会のマッチバイザーに指名された役員は、特にその大会で強調される事項があることを鑑み、当該大会の審判会議に出席することが望ましい。
2「代表者会議」
2−1 その大会のマッチバイザーに指名された役員は、当該大会の代表者会議に出席しなければならない。各種決定事項に対し、周知しておく。

3「試合開始前」
3−1 試合開始前に会場、コート、ゴール、ボールの確認、交代地域のスペース、長さ、ベンチの数、記録席関係備品等の有無、放送設備、医務関係の準備状況を管理し、各種機器の動作具合の点検を管理する。また、その他全般的な事項を管理する。

3−2 競技規則に、GKのユニホームはすべて同色でなければならないとされた。ユニホームの点検の再確認し、管理する。

3−3 ピアス等はイヤリングや突起のない指輪と同類のものとして位置づけられ、他のプレーヤーに危害を及ぼさないようにテーピング等で覆わなければならない。また、膝等のサポーター等についても同様に扱う。マッチバイザーが助言をし管理する。

3−4 顔面マスクについてはIHFでその使用を禁止されたが、日本国内の試合では、GKの再度の眼部及びその付近の受傷保護の観点から申告制として、顔の表情が読み取れる透明のフェースマスクの使用を認める。使用の判断は競技委員長がするものとするが、その結果を受けてマッチバイザーが助言をし管理する。

3−5 屋内外で行われる競技会では、特に禁止されていない競技会では、指に松ヤニを付けてプレーしてよい。指以外の部位(靴等を含む)に松ヤニを貯めておくことを禁ずる。

3−6 トスは競技開始前にコート中央で審判員が行うものであるが、問題が生じたときにはマッチバイザーが助言をすることもある。

3−7 第1試合開始30分前、第2試合以降は前の試合のハーフタイム開始直後にメンバー表が提出される。スコアラーは提出されたメンバー表をもとに、公式記録用紙に転記する。マッチバイザーは公式記録用紙に選手、チーム役員、その他の記入事項が正しく記入されたかを管理する。

3−8 公式記録用紙に転記された選手、チーム役員の記入が正しいものであるかを各チームのチーム役員が確認、署名する。マッチバイザーはチーム責任者が署名することを管理する。

3−9 試合開始前に各チーム代表者が登録証を提出する。選手の確認は審判員が行うが、マッチバイザーはチーム役員の登録証を審判員と協力して管理する。チーム責任者はチーム責任者マークをつけていなければならない。マッチバイザーは審判員と協力して責任者がマークをつけているかを管理する。責任者マークをつけているチーム役員がいなければ、責任者として認められる行動はできないことをチームに伝えておかなければならない。

3−10 外国人チームの場合、通訳を置くことができる。通訳席はベンチの後方に置く。チーム内のチーム役員、選手に外国人がいても通訳席が設けられることではないので、留意すること。

3−11 原則としてチーム役員は日本ハンドボール協会に登録されていなければならないが、トレーナーが派遣役員で氏名を特定できないことがある。その場合は、交代地域の外側に席を用意し、選手が負傷した場合その場所で応急手当をすることを認める。そのトレーナーは交代地域やコート内に立ち入ることはできない。マッチバイザーは応急手当の際の管理をする。
  
3−12 試合中、ボールを持ってのウォーミングアップは禁じられている。ベンチに座ってボールを持つことも許されないので、ボールが収納されていることを管理する。違反している場合には正さなければならない。

3−13 試合開始前に、交代地域規程に違反していないかを管理する。

3−14 試合開始前に、審判員、記録席員との打ち合わせを綿密にしておく。

3−15 試合前の交代地域規程に違反していれば、その違反が正されるまで試合を開始させてはならない。

3−16 試合開始の挨拶時、マッチバイザーを含めて記録席員は起立し、礼をする。

4「試合開始後」
4−1 試合開始の審判員の合図に合わせてタイムキーパーが時計を操作している状態を管理する。

4−2 試合途中の審判員の各種の合図を、記録席員が対応できるよう管理する。審判員が得点の合図をした時、確認の合図(手を高く上げる)をする。警告が出て審判員がその選手を示した時、選手の番号がわかった段階でイエローカードを高く上げ合図する。番号がわからなければイエローカードは用意するものの、高くあげなければ審判員がさらにどの選手かを示す。退場、失格、追放も上記の要領で対応する。

4−3 試合の経過を、マッチバイザー報告書、または、補助用紙(様式任意)に記録する。

4−4 試合開始後遅れてきた選手、チーム役員はタイムキーパー、スコアラー、マッチバイザーが承認することにより試合に出場、参加できる。承認されるためには、出場、参加資格があり、トス時に提出されたメンバー表に記入された者でなければならない。

4−5 記録用紙に記載されていないプレーヤーや参加資格のないプレーヤーが競技に参加した場合、チーム責任者に段階罰を適用する。マッチバイザーが管理する。

4−6 試合途中の交代地域に違反がないかを管理する。違反があれば、次の中断の時にマッチバイザーが審判員に知らせる。

4−7 不正交代、不正入場その他交代地域の違反が確認されたとき、笛を1回吹き審判員に知らせ、タイムキーパーが計時装置の時間を止める。この笛の合図はマッチバイザー、タイムキーパー、スコアラーも吹くことができる。記録席員は常に笛の合図にあわせて時計を止める習慣を身につけていなければならない。笛の合図があったにもかかわらず時計が止まらない場合は、直ちに時計を止めるようさらに大きな動作、行為をもって指示をする。時計を止めた状況を審判員に適切にアドバイスする。
 今回の競技規則改正で不正交代と不正入場について、プレーヤーが交代ラインの範囲外のサイドラインを通ってコートから出ても、スポーツマンシップに反する行為や不正交代とみなさないと記された。プレーヤーが水分補給やタオル使用のためにベンチに戻った場合、退場となったときに潔くベンチに向かったが交代ラインを通らなかったとしても問題としない。混乱がないよう管理する。

4−8 試合途中に、得点、罰則の数を管理する。記録席員は得点した選手、罰則を受けた選手が誰であるかを特定しなければならない。審判員と記録席員の連携がとれるよう管理する。

4−9 チーム役員やプレーヤーは原則として自チームの交代地域に留まるものとする。しかし、チーム役員が交代地域を離れ別の場所へ移動したときは、チームを指揮し管理する権限を失い、その権限を再び得るためには交代地域に戻らなければならない。

4−10 試合中、いかなるものでも許可無く交代地域に出入りさせてはならない。

4−11 大会が認めた報道関係者(テレビ関係)は交代地域で報道活動することができる。

4−12 チームタイムアウトが実施された際、1分間の計時を管理をして、50秒経過時の笛の合図を管理する。審判員とスコアラーは得点、罰則の確認をする。マッチバイザーは審判員、あるいは、スコアラー、もしくは、両者とともに確認をする。

4−13 一つの例として、パッシブプレーの合図が出たときに、チームタイムアウトを請求するという手段をとることがある。ボール所持がどちらのチームであるかを確認しておき対応する。

4−14 試合時間の管理・決定は審判員の責務であるが、マッチバイザーの職務としてタイムキーパーの管理と指導の責務がある。公示時計で表示していても、不測の事態に備え別途に手元のストップウォッチで試合時間を計測しておかなければらない。

4−15 退場時間を管理する。

4−16 退場となった選手をベンチに座らせるよう管理する。

4−17 失格、追放となった選手を速やかに交代地域、競技場から退出させるよう管理する。競技場から退出させるとは競技に影響のない場所に移動させるということである。

4−18 試合中、コート内外を問わず各種紛争が起きた場合、審判員と協力して紛争を収拾するよう努力する。この行動、対処は速やかに、しかも迅速に行わなければならない。

4−19 試合中、何らかの状況で試合が中断した場合、マッチバイザーが直接放送設備を利用して会場に説明することが望ましい。状況によっては、会場のアナウンサーに説明させることもできる。

4−20 前半終了間際のプレイに注意を払う。特に、終了直前のシュートが得点となるかならないかの最終判断は審判員がするが、審判員から助言を求められることがあれば対応できるように細心の注意を払う。

4−21 前半終了、または、試合終了後でも、試合時間内の違反に対しては罰則を適用しなければならないので、審判員の判定に注意を払い、競技規則に合わない場合は助言勧告する。

4−22 前半終了間際、あるいは、試合終了間際になると、次に試合のチームがコート近くにきて各種の準備活動を始める。試合に影響がありそうなウォーミングアップ、ボールの使用は禁止するよう管理する。

4−23 いわゆる「最後の一投」を行う際、負傷したあるいは負傷を訴えたGK以外の防御側のプレーヤーの交代は許されない。また、攻撃側の最後の一投をするプレーヤーは直ちにその位置に着かなければならない。防御側プレーヤーの番号をメモすると混乱の原因を減らせる。

5「ハーフタイム」
5−1 レフェリーとともに審判控え室で競技全般に関する反省をする。レフェリーに対しての指導は審判委員会の責務であるが、必要があれば審判委員会と共同してレフェリングの流れに影響の少ない範囲で助言を与える。前半のレフェリングの流れを変えるような助言は極力慎む。

5−2 ハーフタイム開始時に審判員と記録席員、マッチバイザーが得点、罰則を確認する。

5−3 ハーフタイムの時間を管理する。マッチバイザー、記録席員が席を離れる場合、後半が正確な時間に始められるよう管理する。

5−4 各チームは交代地域を交代する。交代地域のチーム名表示をしている場合は正しく置き換えたかを管理する。

5−5 電光掲示板によるチーム表示は、基本的に前半後半で左右の表示を変えない。

5−6 ハーフタイム終了1分前に公示時計を止め、後半の試合時間を設定するよう管理する。

6「延長戦」
6−1 審判員がトスを行い休憩となる。時間を管理する。

6−2 交代地域の変更を管理する。

6−3 延長戦のハーフタイムは1分間である。休憩後に円滑に試合が始められるよう審判員と協力して対応する。

7「7mスローコンテスト」
7−1 交代地域の管理を重点的にする。ただし、試合に影響がないと判断される場合は、極力管理しすぎないように心がける。

7−2 IHFは5名で実施するが、日本は3名方式とする。2−0になった場合はそれ以降の7mスローは実施しない。

8「試合終了後」
8−1 公式記録用紙に記録された事項が正しく記録されていること確認をする。確認はマッチバイザーの記録と公式記録用紙を照合し、正しければ審判員に確認の署名をさせるよう管理する。

8−2 すべての事項が記入され、マッチバイザーが最終確認をした後、マッチバイザーが署名する。

8−3 記録用紙は1枚目(白)を主催者用として大会本部に提出する。2枚目(黄)を日本ハンドボール協会提出用として大会本部に提出する。3枚目(青)、4枚目(青)は各チームに1部ずつ配布する。記録用紙が速やかにチームに配布できるよう、大会本部に提出できるよう管理する。

8−4 マッチバイザー報告書(エクセル版PDF版)の必要事項を記入し、競技委員長に提出する。

8−5 その試合で特記事項があればマッチバイザー報告書に記入する。

8−6 失格、追放があれば、審判員は審判委員会宛に報告書を提出しなければならない。マッチバイザーも報告書の早期作成、提出を助言する。

8−7 交代地域規程に違反する行為があった場合、あるいは、特別な出来事があった場合、マッチバイザーは速やかに報告書を作成し、裁定委員会に提出しなければならい。

8−8 必要があればマッチバイザーは裁定委員会に出席し、審議に加わる。

以上

参考 : 裁定委員会開催基準


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