<機関誌2009年1・2月号巻頭言>


「緊張の中 牛歩邁進」



                   (財)日本ハンドボール協会専務理事  川上 憲太 


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 皆様、明けましておめでとうございます。昨年はハンドボール界にとって大変注目をさ
れた年になりました。それと同時に「新しいゾーンに入った」ということが言えると思い
ます。それは今までの「この程度で良い」、「一生懸命やっているのだから仕方がない」
といった意識と行動では世の中が許さなくなったということです。今年はあらゆるポイン
トできちんとした目標値(あるべき姿)を認識し、それに向かってこつこつと邁進する年
と位置づけたいと思います。

 この機関誌が皆様のお手元に届く頃には、日本のハンドボール界はすでに大きく動き始
めています。「世界を奪い返す」大きな動きです。1月初旬にはNTSのセンタートレー
ニングが高校生に続き中学生と実施され熱い指導が行われました。男子ナショナルはヨー
ロッパ遠征に強い決意で出発しました。また全国各地でも目標に向かっての動きが開始さ
れたことと思います。

(1)世界を奪い返す

 すでに2012年ロンドンオリンピックのアジア予選に向け、昨年から西窪強化本部長のも
と、着々と強化方針が実施に移されています。世界の舞台での課題「@フィジカル、Aフ
ェイント力(1対1)、Bスピード、Cルーズボール(執念)、Dノーマークシュート」の
克服に邁進しています。

 ややもすると、国内大会の勝敗の中に埋没し、世界への課題を忘れ、国内レベルで満足
し、マンネリ化する傾向がすでに見えます。

 昨年の北京オリンピックアジア予選での韓国戦、そして世界最終予選で本気で向かって
きたヨーロッパの強豪と「心・技・体」すべてにおける「ディファレンス(差)」を強化
の柱として一歩一歩鋼え上げていくことが「世界を奪い返す」道だと考えます。今年は女
子世界選手権出場、そして2010年はアジア大会、ロンドンオリンピック前(2011年)にもう
一度世界選手権が行われます。確実なステップアップは必要です。

(2)ナショナルトレーニングセンター(NTC) フル活用

 すでに多くの方々が使用していますが、日本の強化の「頂点道場」であるナショナルト
レーニングセンターは24時間 365日、いつでも使用可能です。諸機材・会議室・スタッフ
など、トレーニング・研修の環境は万全です。

 U-16、U-18、U-21、U-24と各カテゴリーのトレーニングは勿論、指導者・レフェリーの
講習会、合同合宿、頂点強化・競技力向上のためなら何でも大丈夫です。NTCの 100%
フル活用こそ世界を奪い返す近道なのです。

(3)世界における日本の役割

 「やり直し大会」に代表される日本における国際対応の問題は、まだまだ課題を残して
います。今年は3月にAHF(アジアハンドボール連盟)の総会があり、役員改選の年で
もあります。「アジアの正常化」は昨年少し前進しましたが、根本的な問題については注
視が必要です。場合によっては再度闘牛のように正面からぶつかる場面もあると思ってい
ます。東アジア連盟(特に中国・韓国)の結束を強め対処していきます。IHF(国際ハ
ンドボール連盟)も6月に総会が開かれ会長選挙が行われます。その結果によっては大き
な変化が予想されます。きちんとした提言・行動が必要と考えています。

(4)ハンドボール界、全員で!

 予想もしなかった世界大不況、日本経済の失速という突然の非常事態が世の中を覆って
います。これはスポーツにとって、とりわけハンドボールにとっても必ず影響が来ると考
えます。日本協会の財務体質は現在も万全ではありません。また皆さんそれぞれのチーム・
学校・連盟・協会も同じではないかと思います。「お金が無いから何も出来ない」と考え
る前に、我がハンドボールの諸先輩の皆様が手作り・手弁当・創意工夫でこつこつ発展さ
せてくださった努力・行動をもう一度振り返り、それを鏡にしてハンドボール界全員のチ
ームワークで乗り切りましょう。厳しい時代こそスポーツが大切で必要だからです。一歩
一歩堅実に目標に向かって邁進しましょう。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2009年1・2月合併号より転載